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『男はつらいよ』は、なぜ現代でも愛されるのか?

不朽の名作


山田洋次監督による人情喜劇映画「男はつらいよ」シリーズは、1969年に第1作が劇場公開されてから50周年を迎えています。日本全国を渡り歩く主人公「フーテンの寅」は渥美清さんが少年時代に見たテキ屋の思い出をもとに、山田監督 がつくり出したキャラクターだと言います。シリーズを重ねるごとに人気が高まり、渥美清=寅さんのイメージが日本中に広まり、1983年にシリーズが30作を越えた時、「ひとりの俳優が演じた最も長い映画シリーズ」としてギネス世界記録に認定されています。その後も寅さんシリーズは主演の渥美清さんが亡くなるまでつくり続けられ、49作までの累計観客動員は8000万人、興行収入は900億円を超えています。作品シリーズ自体が「寅さん」の愛称で呼ばれることも多く、今も幅広い世代から愛される、昭和の日本を象徴する人気映画シリーズのひとつとして日本映画史に名を刻んでいます。





4Kデジタル修復


「男はつらいよ」全49作は、松竹映像センターの指揮のもと一大プロジェクトによって4Kデジタル修復されました。フィルムの劣化によってぼやけたり荒かったり画や音が飛んだりしていた映像を、オリジナルネガから一コマずつ、それぞれ1作品あたり約200~500時間かけて、技術者の目と耳で丁寧にフル4Kデジタル修復されています。「4Kデジタル修復」は、ただ映像や音を“綺麗にする”ということではなく、「男はつらいよ」を観たことがある人にもない人にも、どの世代の人にとっても「男はつらいよ」シリーズを「心から楽しんでもらえる映像にする」ということをビジョンに取り組まれたプロジェクトだそうです。復元したデジタル修復版はブルーレイで購入することができるので私も早速観ましたが、映像の古さを全く感じずに、むしろ最先端技術に関心しながら楽しむことができました。





「男はつらいよ」は、なぜ現代でも愛されるのか?


寅さんの人々に愛されるキャラクター


「男はつらいよ」が長く愛され続けている理由、それはなんと言っても寅さん自体のキャラクターでしょう。寅さんあってこその映画と言っても過言ではありません。寅さんは、江戸の落語を思わせる流暢な語り口調でいつも突飛なことを言います。嬉しい時はスキップして鼻歌歌いながら気持ちを表現するのに、怒ると大切な人に辛辣な言葉をあびせて周りの人を困らせたりもします。ですが、どこか愛嬌に溢れていて優しい一面が心にささったり、間抜けでドジな一面が笑いをよんだりと、憎めない存在で不思議と周りからは愛されています。「男はつらいよ」が現代でも愛されるのは、寅さんの人間味がこの映画の持ち味であり、魅力ある人間味はどの時代でも人を魅きつけるからなのかもしれません。



美しいマンネリズムの確立


通常の映画やテレビシリーズであれば絶対に避けるべきとされている“マンネリ化”。しかし「男はつらいよ」の世界では“マンネリ”の展開はむしろ観客に歓迎され、「待ってました!」とばかりに喜ばれてきました。「男はつらいよ」ほぼ全作に共通するストーリーは、テキ屋を営み全国を旅して生きている寅さんがひょんなことから生まれ故郷の東京・葛飾柴又に戻ってきては、故郷や旅の道中で出会った女性への恋心を募らせ、結局は実らなかった恋を忘れるためまた旅に出る・・・というもの。また、ストーリーの骨子だけでなく映画の冒頭では決まって、寅さんの見ている現実離れした「夢」のシーンが描かれたり、育ての親である「おいちゃん」、「おばちゃん」こと叔父夫婦の営む草団子屋・とらやに寅さんが帰ってくるたびに喧嘩が起こり、もう出ていってくれと言われては「それを言っちゃあおしまいよ」という決め台詞を言ったり・・・など、作品はあらゆる様式美に満ちています。「男はつらいよ」に限って「マンネリズム」とは、マイナスの価値から逆転してプラスの価値を指し示す言葉に成り変わりました。「寅さんのマンネリズム万歳」などと例外的にプラスの感触で使われるという面白い現象をもたらしさえもしました。



古き良き日本を感じることができる物語


全49作の「男はつらいよ」にはいつでも家族の絆があります。どんなに離れていても家族は家族。喧嘩したって家族は家族。シリーズを通じて、寅さんと妹のさくら、団子屋のおいちゃんとおばちゃん、義理の弟の博、そして、甥っ子の満男の間には変わらぬ絆が存在していました。日本の古き良き家族の絆やご近所同士のふれあい、 人の暖かさや繋がりを改めて感じることができる物語。それが「男はつらいよ」という映画です。





“生まれてきてよかったなって思うことが、何べんかあるじゃない。そのために人間生きているんじゃないのか?” 車寅次郎

第39作「男はつらいよ 寅次郎物語」より















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