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イノベーションで伝統文化を守る『丹波』

日本の歴史と風土が息づく丹波地域は、古くから自然と共存しながら、独自の文化と伝統を育んできました。丹波地域には、織物、陶芸、酒造、農産物、行事など様々な伝統文化が現存しています。丹波以外にも日本には素晴らしい伝統文化がたくさん存在しておりますが、時代の変化と人口減少の中でいかに未来へと繋げていくかという課題に直面しており、残念ながら産業としては衰退しているのが現実です。そんな中、丹波の伝統文化は、伝統を壊さずに未来へ進化させるイノベーションに挑戦し続け、新しいファンを増やしているという珍しい地域であります。今回、銀座もとじさんの企画で丹波伝統文化を体験することができたので、丹波のイノベーションについてブログを書いてみようと思います







酒造


丹波地域は日本の酒造りにおいて重要な役割を果たしてきた土地の一つです。その地理的条件や豊かな自然、そして伝統の技術が相まって、丹波は全国的にも名高い酒造地帯となっています。今回訪問した西山酒造場さんは、丹波の酒造歴史を大切にしつつ、酒蔵を活かしたリブランディングを行ったことで丹波を代表する観光スポットになりました。酒造見学はもちろん、レストランやホテルも併設されており、古いものを新しく楽しむという不思議な体験ができる施設となっています。まさに、酒造をイノベーションした大成功の事例ではないかと思います





1849年に創業された西山酒造場の蔵。扉が大きく大迫力!






建物の中はレストランやショップとなっており、なんとも言えない雰囲気の歴史的空間設計で魅了されます






料理は、随所に発酵食品を取り入れたメニューで構成されていて、健康にも良さそうです






ロンドンSAKEチャレンジ金賞受賞し、丹波杜氏の技術を惜しみなく投入した最高級の大吟醸酒「小鼓」




西山酒造場さんは伝統と革新のバランスが絶妙であり、見事に酒造のイノベーションを成功させた酒造場です。初心者から愛好家まで幅広い日本酒ファンを取り込んだのはもちろんのこと、日本文化に興味を持つあらゆる層の取り込みにも成功しています。百聞は一見に如かず、丹波篠山を訪れる際には、是非立ち寄ってみては如何でしょうか

◾️西山酒造場
https://kotsuzumi.co.jp





丹波布


続いて、私たち着物人を魅了してやまない丹波を代表する伝統文化の丹波布。丹波布は、江戸時代から伝わる手織りの織物です。その特徴は、シンプルで温かみのある縞模様や格子模様にあります。かつては衣類や日用品として広く使われていましたが、現在では職人さんたちによる伝統技術の継承が行われています。織物の美しさはもちろん、その背景にある丁寧な手作業に心が打たれます





これが丹波布の反物。今でも根強いファンが増え続けています






丹波布は、反物を織る職人さんが増えているのも凄いことです。職人さんが増えている理由は「丹波布伝承館」の存在が大きいといいます。マネタイズの仕組みがしっかりとしており、無理のない収益基盤が丹波布の産業を支えています。丹波布は、技術やデザインのイノベーションというよりも、未来へ繋げる産業基盤のイノベーションを成功させた事例と言えるかもしれません






丹波布職人を目指す人は、伝承館の中にある機織場で2年間自費で学ぶそうです。遺す人、学ぶ人、買う人のバランス考えた仕組みの構築ができていることが凄いですね






今回の企画は、丹波布の着物や帯を身につけて、その反物を織った職人さんへ会いにいくという「里帰り企画」です。職人さんたちは、自分が織った丹波布を身に織った人と会えたことで喜びに溢れていました。これは本当に良い企画だと思います






丹波布の技術を未来に繋げる活動をしている方々です。一度、途絶えそうになった丹波布の技術を復活させた先代から受け継ぎ、今度は自分たちが次世代へ繋げていくという活動をされています。誇りを持っている姿が印象的でした




丹波布は織物としても非常に素晴らしいですが、技術承継の仕組みとマネタイズの基盤が既に整備されていることが凄いと思います。日本各地にはたくさんの着物産地がありますが、産業として未来へ繋げていくことはなかなか難しいのが現実です。しかし、丹波には着物文化を守るノウハウがたくさん積み上がっていました。着物に限らず、日本文化を守る方々は是非とも丹波を参考にして頂きたいと思います





丹波焼


そして、丹波伝統文化の代表格といえば「丹波焼」を外すことはできません。丹波焼は日本六古窯の一つに数えられ、平安時代末期から続く歴史ある陶芸文化です。特徴的なのは、自然釉を活かした素朴で力強い風合いで、使い込むほどに味わいが深まります。現在でも丹波篠山市周辺に多くの窯元が点在し、陶芸体験も楽しむことができます





平安時代から受け継ぐ丹波焼は、現代においても日本国内外で高く評価されています。特に最近では、伝統的な技法を守りながらも現代のライフスタイルに合ったデザインや機能を取り入れた作品が注目を集めています






今回は、歴史ある丹波焼の窯元 丹文窯の4代目、大西雅文さんを訪れて来ました。大西さんの作品は、丹波の土の力強さを最大限に引き出し土の表情あるストイックな作品が特徴です。今では珍しい登り窯(のぼりがま)で作品作りをされていて、苦労話しなどを直接伺うことができました






そしてなんと、大西さんがデモンストレーションで作品作りの様子を見せてくれました。作品が出来上がると、あまりの凄さに歓声が上がりました






大西さんの作品がこちら。これは染料を使わずに土を焼いた色だけで作る「白丹波」。思わず一目惚れで大皿を購入してしまいました






お店は丹波で2店舗経営されており、東京でも個展をたびたび開催されています。機会があれば是非、大西さんの丹波焼を見ていただきたいです




大西さんの丹波焼は、「丹波の土を登り窯で焼く」という伝統は守りつつも、伝統的な形状にはこだわらない新しいデザインの丹波焼に挑戦した結果として丹波焼のイノベーションに成功されています。丹波焼をまるでアートのように仕上げていることで、若いファンもどんどん増えているといいます。陶芸のイノベーションに挑戦し続ける大西雅文さんに是非注目してみてください

◾️大西雅文 OFFICIAL SITE
https://tanbungama109.jp/





丹波のイノベーションから学べたこと


丹波がイノベーションによって伝統文化を守っていることは、私たちビジネスマンや社会人にも通じることだと感じました

時代に合わせて自分を変化や成長させることで、新しい価値を世の中や会社へ示すことができる。変わること自体が目的ではないが、変わっていかなければならない時もある。どう変わるか決まっていなくても、変わっていきながらゴールを見つけても良い。失敗もあるだろうが、未来に向かってチャレンジしていくところにだけ、新しい価値が生まれる可能性がある

丹波の伝統文化を体験しながらそんなようなことを考えていました。丹波は、早くから変わろうとしてきたからこそ、今があるのだと理解することができました。イノベーションによって伝統文化を守っている丹波の方々、心から尊敬いたします。丹波の文化を身にまとい、また里帰りをさせて頂きたいと思います。ありがとうございました。HIRONORI KAJIKAWA










旅の締めくくりは、味噌味の牡丹鍋