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『ボートレース』急成長の理由とは?

公営競技の現況


現在、日本では4つの公営競技が開催されています。農林水産省が管轄する競馬、経済産業省が管轄する競輪とオートレース、そして国土交通省が管轄するボートレースです。4つの公営競技の市場推移を確認するために、2012年から2023年の売上をまとめてみました。売上の推移を見てみると、全ての公営競技がほぼ毎年伸びていることが分かります。(単位:億円)独自調べ





グラフにしてみると、どの公営競技も特に2020年から売上が伸びていることが分かります。そしてそのなかでも、ボートレースの伸び幅は他の公営競技よりも更に大きく伸びており、2023年には過去最高売上となる2兆4220億円にまで成長しました。(単位:億円)独自調べ





経済産業省が2021年に公布した『第3次産業活動指数』においても「特に競艇場の活動量が大きくなっていることがみてとれます」との記述があり、「競輪・競馬等の競走場,競技団」の内訳4業種(競輪場、競馬場、オートレース場、競艇場)のうち、ボートレースは特出した活動量の大きさがあると言及しています。



ボートレースは何故そこまでの急成長を遂げることが出来たのでしょうか?その理由は大きく3つあると考えられます。①マーケティングの成功②オンラインとの相性③レースの場整備。それぞれ詳しくを見てみましょう。



急成長の理由①「マーケティングの成功」


CM、ホームページ等での活発な広報宣伝活動や、若年層にも好感を持たれるような「ボートレース」への呼称変更、モーニング、ナイター等の時間差レースの充実、約9割の競走場で導入されているキャッシュレス投票など、従前から顧客層や利用機会の拡大に積極的に取り組み、成果を上げていたことが人気急上昇した要因であると考えられます。また、「ボートレース芸人」や「競艇系ユーチューバー」といった発信力のある芸能人やユーチューバーが参入したことも大きな要因であることは間違えありません。これらのマーケティングによって、ボレジョと呼ばれる女性ファンや、Z世代と言われる若年層を取り込むことができたのは、ボートレース産業の最も大きな成果のひとつと言えるでしょう。







急成長の理由②「オンラインとの相性」


ボートレースには「テレボート」というネット投票サービスがあり、無料登録すれば全国24カ所で開催しているレースにオンラインで参加することが出来ます。2020年のコロナ流行の際にこのサービスを知って参加してみたというファンは相当多いのではないかと思います。実際に私もそのパターンですし、私の周りにもそういう人が多いです。ボートレースの開催数は、その他の公営競技よりも別格に多く、時間を選ばないという利点もあります。また、最大出走数が6艇なのでチャンスが大きいということも好まれる理由です(競馬は18頭、競輪は9車、オートレースは8車)。「オンラインサービス」は他の公営競技でも完備されているなか、特にボートレースの伸び幅が大きいのは、「チャンスの大きさ」がオンライン参加と相性が良いということがあるのかもしれません。

引用:【個別論点1-1】公営競技におけるインターネット投票に係る現状及びその依存症対策について





急成長の理由③「レース場の整備」


ボートレースは老朽化したレース場を積極的に改修しています。全国売上1位の「競艇発祥の地」ボートレース大村は、2015年3月に全面改装が行なわれ観戦スタンドが大幅にリニューアルされました。また、ボートレース平和島も2023年5月から改装が行われ、2024年4月にボックス席がリニューアルオープンしました。今、ボートレース場は家族や友達同士で安心・安全に楽しめるようにという目的でレース場の整備が進んでいます。オンラインだけではなく、デートや家族外出としての価値を提供していることも売上が伸びていることの理由であると考えられます。








ボートレース場を視察


「ボートレースはなぜ人気が高まったのか?」
それを遊びながら体感するために会社の仲間たちと『BOAT RACE 戸田 (戸田ボートレース場)』へ行ってきました。戸田ボートレース場は関東にあるレース場の中でも特にデートや家族連れに向いていると言われています。その戸田ボートレース場の様子を写真で解説しますので、是非参考にしてみてください。



戸田公園駅からボートレース場までは無料送迎バスあり。5分間隔で出ているのでとても便利






ここがBOAT RACE 戸田 (戸田ボートレース場)






戸田公園大橋という吊り橋で漕艇場水面を渡り、東入場門へ






入場するには入場料100円を支払います






「WINWINカード(ICカード)」を作ればキャッシュレスで投票することが出来ます(カード作成は無料)






中は広々としていて清潔感があります






休憩コーナーも明るくきれい






一般席は無料ですが、今回は指定席で遊んでみることに(指定席は500円、1000円、2000円の3種類)






指定席は専用ゲートを通って入場します






指定席はこんな感じ(ちなみに後方席が一番高い席)






新聞と赤ペンを買って自分の席に着きます(これがセオリー)






さて、いよいよ開始。まずはここでマークシートをゲットします






新聞を見ながらどれが良いかを選びます






自分で予想するのが難しければ予想屋に聞くことも出来ます(有料サービス)






マークシートに記入したらこの機械で購入します。払戻しもこの機械で






WINWINカード(ICカード)にチャージしておけばキャッシュレス専用機で購入出来ます






さてさて、レースが始まりました






レースの合間は腹ごしらえ。レストランも充実してます






気分転換のついでに外でレース観戦することもおすすめです






戸田ボートレース場は家族連れのための施設がとても充実してます






子供用ボルダリング






乗り物だってたくさんあるし






ガチャガチャや






ゲーム機も設置されています






こちらはVRボートレースアトラクション






なんと、床屋さんもあるんです






すでにデートスポットになってますね






公営競技の課題「依存症対策」


ボートレースはオンラインで遊びやすくなっている反面、依存症対策という課題にも直面しています。パチンコ・パチスロのような来店型よりも依存症のリスクが高いと言われていますので、適度に楽しむ娯楽としての対策も求められています。今後、どのような依存症対策をしていくのか注目をしていきたいと思います。

引用:【個別論点1-1】公営競技におけるインターネット投票に係る現状及びその依存症対策について





「急成長の理由」まとめ


ボートレースの好調さの理由は、オンライン化等により場所や時間の制約を超えられたことに加え、他の公営競技と比べて勝つチャンスが高いという要素がファンに受け入れられたことであると考えられます。さらに、マーケティングによって女性ファンや若年層ファンの新規獲得が出来たことが過去最高売上に繋がったと言えるでしょう。そして、ボートレース場は各地でリニューアルが行われ、「きれいで安心・安全」という認知が広がり、家族連れで楽しむ場所、あるいはデートスポットとして人気が高まったことも成長の理由として挙げられます。この、「きれいで安心・安全」という認知が広がったことによって「家族連れで楽しむ場所」になれたことは、ボートレース産業にとって次世代に繋がる大きな成果物ではないかと思います。子供世代がボートレース場に足を運ぶことは、次世代のファンになる可能性を秘めています。依存症対策という課題をどう解決して、優良な娯楽産業として次世代に繋げていくのか、今後も注目していきたいと思います。HIRONORI KAJIKAWA