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『超インフレ国家』ハンガリー滞在記

先日、夏季休暇を利用して東欧のハンガリーに行ってきました。陸上部に所属する子供の付き添いで「世界陸上2023ブダペスト」を観戦することがメインの目的でしたが、ハンガリーは今、深刻な物価上昇に悩まされている国でもありますので、ハンガリーの消費生活はどんな状況になっているのかを知るために空き時間を利用して「物価」の市場調査をしてみました。

経済関連のニュースでは、ハンガリーを含む欧州のインフレは依然として深刻であると報じられています。ウクライナ危機に伴う資源高は落ち着く半面、食品やサービスの価格上昇が顕著であります。4月の消費者物価指数の上昇率は前年同月比で7.0%と6カ月ぶりに拡大。2022年10月につけた過去最高の10.6%からは鈍化したものの依然高止まりしており、米国(4.9%)や日本(3.5%)を大幅に上回っています。この深刻なインフレは欧州全体を覆っていますが、その欧州の中でもハンガリーは過去25年で最悪な物価高と言われております。そんなハンガリーの首都ブダペストで実際にお金を使って消費者体験をしてみました。





ハンガリーってどんな国?


ハンガリーは中央ヨーロッパに位置する内陸の国で、非常に多くの歴史的建築物やクラシック音楽、温泉文化、美味しいワイン、豚肉やフォアグラが有名な国です。首都ブダペストは、街全体が世界遺産に登録されており、欧州の中で最も美しい街とも言われています。EU加盟国ではありますが独自通貨のフォリント(HUF)を採用しており、ユーロはほとんど利用できません。1フォリントは0.42円(2023年8月)。ちなみに日本ではフォリントへの両替が難しいため現地での両替が必要となります。ですが、ほとんどの場所でクレジットカードが利用できるので数千円分のフォリントがあれば短期滞在で困ることはありません。ただし、 American Expressはほとんど使えないのでVisaかMastercardを持参しましょう。





街並みはこんな感じ









どこまで行っても美しい街並みは続く









ハンガリーは乗り物もオシャレ









バスはとにかく長い(運転大変だろうな)









タクシーは全て黄色。Boltというアプリを使って乗車します









タクシーの初乗りは1650フォリント(685円)。以降、1kmごとに440フォリント(182円)掛かります。ただ、ブダペストの街は狭いのでだいたい2,000円以内で移動できます









ガソリンは激高です!レギュラー1L当たり647フォリント(268円)。ハイオクは674フォリント(280円)









そのためか、街のいたるところにシェアサイクルが設置されています









ただし夏は暑いので、よく見かけたのはこっち。というか、皆さんめちゃくちゃ乗ってます。2人乗りも良く見ました。現地の人に聞いてみたら免許が必要ないから所有している人が多いのだとか









ということで販売店に行ってみました。普通に家電量販店で売っています









息子がポケトークで詳細を調べています









価格は179,999フォリント(74,725円)。ガソリン高を考えると確かにこっちの方がお得ですね。ただ冬はどうする...




ハンガリーの首都ブダペストは街が大変美しく、どうやってこんなにオシャレな街になったんだろうと思うほど。ただ、原油高騰の波を思いっきり被っておりガソリンは激しい高値になっています。その分タクシーが低価格なのとアプリで仕組み化されているのでタクシーの利用が多いのかもしれません。そして若者は、街がそれほど広くないのでエコな乗り物で対策をしているといった感じです。ふむふむ。





「物価」の市場調査へ


さて、ハンガリーの深刻なインフレを知るために街へと繰り出します。まずはスーパーへ。ハンガリーはスーパーもオシャレ









最も値上げ率の高い食品のひとつ乾燥パスタの値上りは、前年同月比+70.8%









同じくパンは+81.1%。ってもうほぼ2倍じゃないですか!









でも元々パンは安価な食品だったそうで、このスーパーは価格据え置きのパンを売っていました。1個69フォリント(28円)。これは助かりますよね。









ハンガリーは「価格凍結制度」によって8つの食品の値上げは政府が禁止しています。ただし、野菜類は含まれていないので高騰しています。ハンガリーは農業の生産性が低いので価格の維持をしてしまうと生産者が減ってしまうとのこと。厳しい現実...









果物類も同様に高騰しています。中には値上げ率+109%を超える品目もあるとか









場所を移してブダペスト中央市場へ。1897年に建設された建物です









肉類は一部「価格凍結制度」に含まれていますが牛肉は除外。市場だと量が多いですが割安で購入することができるみたいです









野菜類も市場の方がやや割安のようです。市場でまとめ買いして賢く保存するのが良いのでしょうね









これ全部Kg売りですが、確かにスーパーで買うよりは安いです




「価格凍結制度」で価格に上限設定されている食品はありますが、それは8品だけ。除外品に関しては値上げ率50%~100%で、中には150%という食品もあるのだとか。確かにこれではきついだろうなーと感じました。以前と比べて、食品の価格が2倍だなんて日本ではあまりないですが、ハンガリーではまだまだ落ち着きを見せない状況にあります。激しいインフレの状況が良く分かりました。





ビックマック指数


ビッグマック指数とはハンバーガーの価格から各国の総合購買力を測る指標です。マクドナルドが世界各国で販売するビッグマックの価格を比較して、各国の通貨の総合購買力(貨幣価値)を見るもので、イギリスのエコノミスト誌が毎年発表しています。ビッグマック指数が高いほど国際間の購買力は高いと評価されます。





ハンガリーのビックマック指数が気になったのでマクドナルドを調べてみると、なんと「世界で最も美しいマクドナルド」がブダペストにありました。早速行ってみると、まあ美しい!








ビックマック購入。パッケージは日本と同じでしょうか









若干、野菜が頼りない感じがしますが、大きな違いはないようです









そして!値段は1400フォリント!日本円で581円。日本では今年7月から値上げされましたがそれでも500円。値上げ前は450円だったので130円以上の開きがありました。貨幣価値から考えてもさすがに日本の方が高いだろうと思っていましたが現実は違っていました。ちなみに米国のビッグマックの中間価格は5.58ドル(約800円)。いかに日本が安いか。









ちなみに、ハンガリーは英語圏ではないのでほとんど英語が通じません。公用語はハンガリー語。便利なポケトークに随分と助けられました









日本との比較


ビックマックが日本よりも高いというのが分かりました。では他のものはどうなんだろう?ということで「日本との比較」という観点から市場調査をしてみました。まずはスターバックスコーヒーへ









アイスコーヒーを頼んでみました。価格は790フォリント(327円)。日本では350円なのでやや日本の方が高い









ハンガリーのアイスコーヒーはクリームが乗ってくるのでご注意を









場所を移して、ちょっと一休みで入ったカフェ。ケーキの価格を見てみると1,490フォリント(618円)









こちらはレストランのメニュー。単品のパスタが3,000~4,000フォリント(1,245~1,660円)









映画館のホットスナックが2,350フォリント(975円)。日本と比べても高めですね









でも、一番高いなと感じたのは薬です。息子が腹痛を起こしたので薬局で薬を買うことに。価格は6,000フォリント(2,490円)。海外に行く時は薬を忘れずに









あ、メインの目的は世界陸上の観戦でしたので、一応写真を









サニブラウン選手、感動をありがとう!






はい、ということで「超インフレ国家」ハンガリーの物価市場調査をしてみました。ハンガリーは欧州のなかで断トツに消費者物価指数が高く物価高に悩まされています。平均給与水準が低く物価だけが高騰していっている現状を見ると、国民の方は本当に苦しい想いをしていることだろうと思います。ハンガリーの平均給与は約580,000フォリント(240,000円)ですので、日本よりも大幅に低いですが、物価は日本よりも高い物ばかり。賃上げのストライキが頻繁にあるそうなのですが、なんとなく気持ちが分かります。今回、実際にお金を使って消費体験してみて、ハンガリーの物価状況が少し理解できたのと同時に、「日本の安さ」という部分が気になりました。物の価格が日本の数倍と言われる米国は、並行して給与水準も上昇しているのでハンガリーのような苦しい状況にはないようですが、日本はどっちに向かっているのか。米国のように付加価値の向上を実現することはできるのか。そのような疑念が脳裏をよぎりました。





さてと16時間かけて日本に帰ります。空がとてもきれいです。(ん、竜巻?)






次回のブログは、私の米国人の友達に「付加価値の上げ方」について話しを聞いたので書いてみたいと思います。宜しければお読み頂ければ幸いです。HIRONORI KAJIKAWA