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『Threads』の本当の目的は何なのか?

Threadsは「Twitterキラー?」


米Meta(メタ)から7月5日にリリースされたSNS「Threads」の利用者が公開からわずか5日で1億人を超え、その後も「ChatGPT」を上回るペースで伸び続けています。機能やUI(ユーザーインターフェース)についてはTwitterと類似する点が多く、イーロン・マスク氏が買収して以降のトラブルや仕様変更などに不満を募らせているTwitterユーザーの受け皿として、新たな選択肢のひとつとなっています。Metaは、すでにFacebookやInstagramの巨大なユーザベースを抱えており、ユーザー名などのアカウント情報やソーシャルグラフ(SNS上の人間関係)を「Threads」に移行させることもできるなど、大きなアドバンテージがあるといえます。Metaの動きは、Twitterを中心としたテキストベースSNSの覇権を取りに来ているという見方もされており、「Twitterキラー」と呼ばれているケースも見受けられます。イーロン・マスク氏の対抗策も矢継ぎ早に打ち出されていることを考えると、覇権争いはますます激しくなっていくと予想されます。

しかし、Twitterといえば「赤字」で有名な企業でもあります。創業から2018年まで赤字業績が公開されており、2019年に黒字化に成功したものの、翌年2020年から再び赤字に転落しています。Twitterはずっと赤字であることで知られているにもかかわらず、どうしてMetaは同様のプラットフォームを開発したのでしょうか?単なるTwitterキラーとしてリリースしたとは考えにくいので、Threadsの本当の狙いについてフォーカスしてみたいと思います。





Threadsの本当の目的とは?


Threadsリリースの本当の目的は、Twitterに類似する「テキストベースSNSの覇権を取る」ということではなく、「生成AI競争に勝つ」というところにあると見られています。ここ数カ月のAIを取り巻く状況は、まさに「覇権争い」といった状況にありますが、Metaは2021年に社名を変更してまで一時メタバースに力を入れたため、AIの投資においては遅れを取っています。その遅れを取り返す絶好の機会が来たと判断してThreadsをリリースしました。多くの企業が生成AIに時間と資金を投資するなか、AIモデルを訓練するためには大量のデータが必要とされています。Twitterはこれまで、何百万というユーザーによって生成されたコンテンツを有しており、これらのデータを広く公開していました。しかし、2023年に入り、イーロン・マスクはTwitterのAPIの使用料として月額42,000ドル(約590万円)の徴収を始めることを発表しました。また、マスク氏はTwitterのデータへのアクセスを厳しく取締り続けており、ログインをしなければTwitterのコンテンツが見られないよう制限がかけられました。加えて、1日に600件以上のツイートを見たい場合は有料サービスであるTwitter Blueに登録しなければいけないようにもなりました。そこでMetaは7月中旬、独自の大規模言語モデル(LLM)であるLlama2の開発を発表しました。このAIモデルはオープンソースで、企業になどには無料で提供されることになります。

メタはすでにInstagramやFacebookといったプラットフォームに大量のデータを保有していますが、LLMの訓練には膨大な量のデータが必要になり、データを常に更新していかなくてはならなりません。Twitterのデータが簡単には手に入らなくなった今、同様のユーザー生成データを入手しようと思ったら、Twitterそっくりのプラットフォームをつくるのがいいだろうという考えに至った。マスク氏がTwitterにさまざまな変更を加えたことでユーザー離れが起こっている今こそが最大のチャンスである。MetaがThreadsをリリースした本当の狙いはここにあります。大量のデータを必要としている企業がTwitterに頼れなくなった今、ThreadsはAI分野において新たな受け皿になることを目指したのであります。







定まってきたThreadsの利用価値


日本でも7月6日にリリースされてから、私も個人的にThreadsを利用しています。1ヵ月ほど利用してみてだんだんと利用価値が定まってきたように思えますが、実際に利用してみてTwitterとはここが違うなと感じたことをまとめてみました。


①基本的に炎上が少ない
②企業アカウントが増加している
③テキストベースの投稿が多い(8枚写真利用は少ない)
④きちんとした文章を書こうとしているユーザーが多い
⑤勧誘や詐欺っぽい投稿は今のところ少ない


Instagramと完全に紐づいているからなのか、今のところほぼ炎上している投稿を見たことがありません。タイムラインを見ていると「使いやすい」や「安心して気軽に投稿できる」などの内容も多く、安心して利用できるテキストベースSNSの開拓に成功したようにも思えます。一方で、投稿のキーワード検索ができない点やハッシュタグ(#)機能がない点、あるいはPCブラウザでは基本的に使用できない点など、まだ利便性が悪い点もあります。また、デイリー・アクティブ・ユーザー数(DAU)が減少傾向にあるということで早くもユーザー離れに直面しているとの見方もされています。今後は機能性が向上し、良質なユーザー体験が提供されることを願いつつ、新しいものにはとりあえず触れておく精神で、Threadsライフを楽しんでみたいと思います。HIRONORI KAJIKAWA

梶川弘徳Threadsアカウント
https://www.threads.net/@hironori_kajikawa