SBGから学ぶ『経営判断』
2020-02-16
一般的に経営判断の意思決定に影響を及ぼす要素としては、事業計画・ガバナンス・経営理念などが挙げられますが、第2四半期決算発表で私が特に注目したのは2つです。ひとつは「ガバナンス」ついて。孫社長が2つの反省として説明したうちのひとつに「投資先のガバナンスに対するグリップの弱さ」があります。WeWorkの取締役会9名のうち、SBGは1人の枠しか持たず、創業者がコントロールしていた取締役会での決定事項を止めることが出来なかったことを要因として挙げています。それを反省してSBGは今年2月に「投資に関するガバナンス基準の強化について」をプレスリリースしました。この基準は、投資先の「取締役会の構成」「創業者・経営陣の権利」「株主の権利」「利益相反の回避」などに関連するもので、広範にわたるコーポレートガバナンスの要件を網羅していると説明されています。ガバナンスが弱かったことが経営判断へ大きく影響を及ぼしたこと、また今後は、より明確な規律に基づいた投資活動を展開していくためにガバナンスへの取り組みを強化したことが分かります。これは大変勉強になりました。
投資に関するガバナンス基準の強化について
https://group.softbank/corp/news/press/sb/2020/20200212_02/
そして、私が注目した経営判断の意思決定に影響を及ぼす要素のもうひとつが「経営理念」です。経営理念は会社の羅針盤や旗印などという言われ方をされていますが、SBGは「情報革命で人々を幸せに」という経営理念を掲げています。これは1987年10月にあるインタビューで孫社長が語った技術進化への想いだそうです。第2四半期決算発表で孫社長は「SBGは今、投資会社である」と説明しているように、通信会社から投資会社へと変貌を遂げています。事業スタイルの変貌自体は素晴らしいことだと思うのですが、シェアオフィス事業のWeWorkへ投資をするような今の投資戦略や経営戦略は、経営理念として掲げている「情報革命で人々を幸せに」という大きなビジョンに向かっているのかどうか、とても気になるところです。ビジョンに向かって大きな成果を挙げ我々に幸せをもたらしてくれるのか、それともSBGにとって経営理念とはただの飾りなのか、今はその答えは見えませんので長く注目をしていきたいと思います。
SBGの経営理念
https://group.softbank/corp/about/philosophy/
2020年2月6日、「物言う株主」として知られるアメリカのエリオット・マネジメントがSBGに25億ドル(2725億円)を投資して発行済み株式数の約3%を取得しました。エリオット・マネジメントは、SBGのハイテク企業への投資判断について懸念を示し、「ガバナンスの改善」を求めている模様だと報じられています。SBGが今後、どのような経営判断をしていくのか、動向に注目してしっかりと学ばせてもらおうと思います。HIRONORI KAJIKAWA