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会社が急成長したときほど、経営者が見るべき数字

2026-08-25

成長期の失敗から学んだこと


会社を経営するうえで、私が大切にしている指標の一つがあります。粗利販管費率です。

なぜこの数字を大切にしているのか。理由はシンプルで、過去にこの数字で失敗した経験があるからです。会社が大きく成長していた時期、私自身、粗利販管費率を約5ポイント上げてしまったことがあります。当時は事業が順調に伸びていました。仕事が増え、人を採用し、組織を整え、広告やシステムにも投資していく。会社を次のステージへ進めるために、どれも必要だと考えていた投資です。もちろん、私は今でも会社を成長させるための投資には積極的でありたいと思っています。新しい事業にも挑戦したいですし、そのために人や組織へ先行投資することも必要です。ただ、当時は売上の成長に目を向ける一方で、その成長によって粗利がどれだけ増え、それに対して販管費がどれだけ増えているのか。そこを見る視点が十分ではありませんでした。5ポイントという数字だけを見るとそれほど大きく感じないかもしれません。しかし、粗利10億円なら5,000万円、粗利20億円なら1億円です。会社の規模が大きくなるほど1ポイントの重みも大きくなります。この経験が、今の私が「粗利販管費率」を大切にしている理由です。





粗利販管費率とは何か


計算式は非常にシンプルです。

粗利販管費率 = 販管費 ÷ 粗利 × 100

つまり、自分たちが稼いだ粗利100円のうち、何円を販管費として使っているのかを見る数字です。粗利100円に対して販管費が70円なら70%、80円なら80%です。一般的な財務分析では、売上高を基準に粗利率や売上高販管費率、営業利益率などを見ることが多く、粗利販管費率という名称自体も完全に標準化された財務用語というわけではありません。それでも私がこの数字を大切にしているのは、会社が成長していく過程で、粗利と販管費のバランスがどう変化しているのかを直感的に捉えやすいからです。

「営業利益率を見れば同じではないか」と思われるかもしれません。もちろん、営業利益率も重要です。ただ、営業利益率だけを見ていると、その数字が変化した原因が、粗利率が下がったことにあるのか、販管費が増えたことにあるのか、それともその両方なのかを切り分けにくいことがあります。たとえば営業利益率が前年より2ポイント下がったとしても、仕入価格の上昇によって粗利率が悪化したのか、人件費や広告費などの販管費が増えたのかでは、経営として取るべき対応はまったく違います。だから私は、営業利益率という「結果」だけを見るのではなく、その手前にある粗利率と粗利販管費率を分けて見るようにしています。営業利益率で最終的な収益性を確認しながら、粗利率で「どれだけ粗利を生み出せているか」を見て、粗利販管費率で「生み出した粗利に対して、どれだけ販管費を使っているか」を見る。こうして分解することで、利益が増えた、減ったという結果だけではなく、その変化がどこから生まれているのかを捉えやすくなります。





粗利販管費率は「高い・低い」だけでは判断しない


ここで重要なのは、粗利販管費率は低ければ低いほど良いと単純に考えないことです。会社を成長させるためには先行投資が必要です。人を採用する、広告を増やす、新しい拠点をつくる、システムを導入する、管理部門を強化する。売上や粗利が増えるより先に、販管費を増やさなければならない局面は当然あります。今期は販管費が先に増える。しかし、その投資によって来期、再来期の粗利が大きく伸びる。そうした時間軸を持った投資であれば、一時的に粗利販管費率が上昇すること自体は問題ではないと思っています。だから見るべきなのは、数字が上がった、下がったという結果だけではありません。「なぜ粗利販管費率が変化したのか」ここを見ることが重要です。そこで、粗利販管費率と合わせて私が見ているのが、「粗利成長率」と「販管費成長率」の関係です。





成長の質を4つのゾーンで考える


縦軸を「粗利成長率」、横軸を「販管費成長率」とすると、会社が今どのような成長局面にいるのかを4つに分けて考えることができます。ここに、今回作成したマトリクスを当てはめます。







粗利成長率が高く、販管費成長率が低い状態は「理想的な成長」です。販管費の増加以上に粗利が伸びているため、会社が大きくなるにつれて生産性も高まり、利益を生み出す力が強くなっている状態です。

粗利成長率も販管費成長率も高い状態は「先行投資型の成長」です。採用や広告、新規事業、システムなど、次の成長に向けて積極的に投資している会社はこのゾーンに入ることがあります。私は、このゾーンに入ること自体を悪いとは考えていません。むしろ会社を大きく成長させようとすれば、意図的にここへ入る場面も必要だと思っています。そのときに持っておきたいのが「この投資によって、いつ粗利の成長が販管費の成長を上回るのか」という時間軸です。

粗利成長率も販管費成長率も低い状態は「守りの経営」です。事業が安定している局面ではこの状態になることもあります。

そして、粗利成長率が低い一方で販管費成長率が高い状態は「危険な成長」として注意して見ています。人や組織への投資は増えているものの、それに対して粗利の成長が追いついていない状態です。

このマトリクスで大切なのは、どのゾーンが良くて、どのゾーンが悪いと決めつけることではありません。自分たちが今どの成長局面にいて、次にどこへ向かおうとしているのか。それを確認するためのものだと考えています。





さらに見ておきたい「粗利率」の変化


そして、このマトリクスを考えるうえで、もう一つ忘れてはいけない数字があります。それが粗利率です。たとえば「先行投資型の成長」を考えてみます。将来の成長を見込んで人を採用し、広告を増やし、新しい拠点をつくる。販管費が先に増え、その後に粗利が追いついてくる。成長過程では自然なことです。ただし、販管費を増やした後も、当初想定していた粗利を確保できるとは限りません。たとえば、売上100億円、粗利率30%なら、粗利は30億円です。翌年、売上が20%伸びて120億円になったとしても、原材料費や仕入価格の高騰によって粗利率が30%から27%に下がれば、粗利は32.4億円です。売上は20%成長しているのに、粗利の成長は8%にとどまります。ここで影響してくるのが、成長を見越して先に増やした販管費です。人件費や家賃、拠点費、管理部門のコストなどは、一度増やすと粗利率の変化に合わせてすぐに減らせるものではありません。売上は伸びている。しかし、原価高騰などによって粗利率が下がり、粗利は想定ほど伸びない。一方で、先行投資によって販管費は増えている。こうなると、売上が成長しているにもかかわらず、粗利販管費率が上昇し、営業利益が想定以上に圧迫されることがあります。私が粗利販管費率を大切にしている理由の一つも、ここにあります。





大きくしながら、強くする


今回の話は、販管費を増やさない方がいいという話ではありません。会社を成長させるためには、新しい事業、人、組織への先行投資が必要です。だからこそ、売上が計画通り伸びるケースだけではなく、粗利率が数ポイント下がったらどうなるのか、粗利の成長が想定より遅れたらどうなるのか、そのとき今の販管費水準でどれだけ利益を残せるのか。そこまで考えながら投資することが大切だと思っています。過去に粗利販管費率を約5ポイント上げた経験は、私にとって一つの失敗でした。しかし、その経験があったからこそ、今は売上だけではなく、粗利率、粗利成長率、販管費成長率、そして粗利販管費率をセットで見るようになりました。成長のスピードだけではなく、その質も見る。売上が増え、粗利が増え、そこで生まれた利益をまた次の成長へ投資する。そんな循環をつくることで、会社は大きくなりながら、同時に強くなっていくのだと思います。会社を大きくしながら会社そのものも強くしていく。粗利販管費率は、自分自身の失敗から学び、これからも大切にしていきたい経営指標の一つです。HIRONORI KAJIKAWA









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