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全体最適を実現する横断統治の新モデル

2026-06-06

横断統治という考え方


企業が成長し多角化が進むほど難しくなることがあります。
それは「全体最適」です。

各事業は順調に成長している。各責任者も優秀で、現場も頑張っている。それなのに、組織全体で見るとどこか噛み合わない。事業ごとに価値観やルールが異なり、評価制度も違う。部分最適は進んでいるのに、全体最適が実現できない。私たちもホールディングス経営を進める中で、この課題に向き合うようになりました。

長寿企業を目指すのであれば、単に事業を増やすだけでは不十分です。複数の事業が存在しながらも、一つの方向へ進める仕組みが必要になります。そこで重要になるのが「横断統治」という考え方です。



前提として、理念が揃っていれば難しくない


横断統治という言葉を聞くと、多くの人は複雑な仕組みや高度なマネジメントを想像するかもしれません。しかし私は、本質はもっとシンプルだと思っています。前提として、理念やパーパスが揃っていれば、横断統治はそれほど難しいものではありません。なぜなら、人はルールではなく目的によって動くからです。

何のために存在するのか?
どこを目指すのか?
何を大切にするのか?

これらが共有されていれば、事業ごとのやり方や制度が異なっていても、大きく方向を見失うことはありません。逆に理念が揃っていなければ、どれだけ制度を整えても組織はバラバラになります。横断統治の出発点は、制度ではなく理念の共有にあると思っています。





事業の役割を明確にする


私が最近たどり着いた考えがあります。それは、異なる組織や部門を同じ重要性で見ないことです。組織運営では平等が重視されることがあります。しかし、平等と同一は違います。例えば、人事、経理、営業、事業責任者。それぞれ重要な役割を担っていますが、会社の未来を左右する影響力や責任範囲は同じではありません。また、ホールディングス経営においては事業ごとにも役割があります。

利益を生み出す事業
未来への投資を担う事業
ブランド価値を高める事業
人材を育成する事業

どれも重要です。しかし、その役割は同じではありません。役割が違う以上、期待される成果も違う。ならば評価基準も違って当然です。全員を同じ物差しで評価しようとすると、かえって不公平になります。横断統治で重要なのは、全員を同じように扱うことではなく、役割ごとに最適な期待値と評価を設計することだと考えています。



統治とは統一することではない


多角化組織になると、グループ全体で評価制度を統一すべきではないかという議論が出てきます。しかし私は必ずしもそうは思いません。事業フェーズも違う。利益構造も違う。求められる能力も違う。それなのに評価制度だけ統一してしまうと、現場とのズレが生まれます。大切なのは制度の統一ではありません。考え方の統一です。

なぜその評価なのか?
なぜその役割にその期待を置くのか?

そこに納得感があれば、制度は必ずしも同じである必要はありません。むしろ事業特性に合わせて柔軟に設計した方が組織は強くなります。私は、横断統治における最大の誤解は「統治=統一」だと思っています。統治とは、全員を同じルールで管理することではありません。異なる役割を認めながら、同じ方向へ進めることです。



モンゴル帝国との共通点


この考え方を整理している時に思い出したのが、モンゴル帝国です。モンゴル帝国は人類史上最大級の版図を築いた国家として知られています。なぜあれほど広大な領土を統治できたのでしょうか。理由の一つは、征服した地域を無理に同じ形へ統一しなかったことにあります。

宗教も違う
文化も違う
民族も違う
それでも中央の方針には従う

各地域には一定の裁量を与えながら、全体としては同じ方向へ進ませる。現代風に言えば、「分権」と「統治」の両立です。これはホールディングス経営にもよく似ています。各事業会社は独立した経営判断を行う。しかしグループとしてのパーパスやビジョンは共有する。現場の自由度は高い。しかし進む方向は揃っている。だからスピードも出るし、全体最適も実現できる。モンゴル帝国が強かった理由は、すべてを同じ形にしたからではありません。違いを認めながら、一つの目的に向かわせたからです。私はそこに、現代の横断統治との共通点を感じています。



共感がなければ機能しない


ただし、このモデルには大前提があります。それは、メンバーの理解と共感です。役割によって期待値が違う。評価も違う。責任範囲も違う。これを制度だけで押し通そうとすると必ず反発が生まれます。だからこそ理念やパーパスが必要になります。

なぜこの役割が存在するのか?
なぜその責任を負うのか?
なぜその評価なのか?

それをメンバーが理解し、共感できて初めて横断統治は機能します。理念が揃っていれば難しくない。しかし理念が揃っていなければ、どんな制度も機能しない。私はそう考えています。長寿企業を目指すために事業が一つであれば、トップダウンでも何とかなるかもしれません。しかし事業が増え、組織が複雑になるほど、それだけでは限界が訪れます。必要なのは、すべてを同じルールで縛ることではなく、異なる役割を認めながら、一つの方向へ進ませる仕組みです。

理念を揃える
事業の役割を明確にする
そして、統治を統一と勘違いしない

私はこれこそが、ホールディングス経営における横断統治の本質だと思っています。モンゴル帝国が広大な領土を統治したように、長寿企業もまた、多様性を受け入れながら全体最適を実現する仕組みを持っています。これからの時代、組織づくりの競争力は「管理する力」ではありません。異なるものを束ね、一つの未来へ導く力。横断統治とは、そのための新しい経営モデルなのだと考えています。HIRONORI KAJIKAWA











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