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「韓国の米余り」との比較から見えた、日本農業の事業構造

2026-05-08
私は現在、農業を事業として始めるかを検討しています。ただ、私はまだ農業従事者ではありませんし、現場を知っているわけではありません。だからこそ、まずはできる限りデータを集め、外から農業の構造を理解しようとしています。


日本の農業が経営難に置かれている理由を調べる中で、いろいろと分かってきたことがあるのと同時に、海外との比較も必要だと感じています。特に韓国は、日本と同じく米を主食文化の中心に置いてきた国であり、人口減少や農業政策の面でも比較対象として非常に近い存在です。その中で私が注目したのが、韓国の「米余り」の問題です。


韓国は今、「米が余る国」と言われています。これは印象論ではなく、データで確認できる構造的な問題です。韓国の1人あたり年間米消費量は、1994年には108.3kgありましたが、2024年には55.8kgまで減少しています。30年でほぼ半減したことになります。また、2024年の韓国全体の1日あたり消費量は152.9gで、1人あたり茶碗1.5杯程度とされています。


一方で、米の生産は需要ほど急激には減りません。韓国の米生産は近年減少傾向にありますが、それでも供給過剰が起きるため、政府による市場隔離、つまり余剰米の買い取りが行われてきました。2022年には韓国の在庫率が消費量比で34.7%に達し、日本の在庫率12%の約3倍近い水準だったとも報じられています。つまり、韓国の米余りはこう整理できます。


『需要は大きく減っている。生産も減っているが、需要ほど速くは減らない。余った米は政府が市場から吸収する。しかし、それでも在庫が積み上がる』


この構造が、米が余る国と言われる理由です。





ここで重要なのは、韓国もただ米を作り続けているだけではないという点です。近年は韓国政府も、米から他作物への転換を進めています。実際、米の生産量は4年連続で減少しており、計画的な作付面積の削減に加え、天候や病害の影響もあったとされています。つまり韓国の問題は、何も調整していないから余っているという単純な話ではありません。正確に言えば、需要減少のスピードに対して、生産調整や用途転換が追いついていない。ここに本質があります。


では、日本はどうでしょうか。


日本も米の消費量は長期的に減少しています。農林水産省によると、日本の1人あたり米消費量は食生活の変化などにより一貫して減少傾向にあり、令和6年度は53.4kgとされています。この数字だけを見ると、日本と韓国の1人あたり米消費量はかなり近い水準です。


韓国が2024年で55.8kg
日本が令和6年度で53.4kg


つまり、韓国は米を食べなくなったが、日本はまだ食べていると単純には言えません。むしろ、1人あたり消費量だけを見れば、日本も韓国とかなり近いところまで来ています。では、なぜ韓国では米余りが強く問題化し、日本では別の形で需給問題が出ているのか。ここは慎重に見る必要があります。


日本には、長年にわたり主食用米の生産を抑え、麦・大豆・飼料用米・加工用米・米粉用米などへ転作を促す政策が存在してきました。農林水産省の資料でも、水田を活用して主食用米以外の作物を生産する農業者への支援が示されています。一方で、日本の米生産が減ってきた理由を、政策的な需給コントロールだけで説明するのは不十分です。農家の高齢化、離農、経営体数の減少、作付面積の縮小も大きな要因です。つまり、日本は意図的に生産を調整している面と、担い手不足によって自然に生産力が落ちている面の両方があると見るべきです。ここを間違えると、判断を誤ります。


日本はある意味、韓国より需給コントロールがうまくいっているという見方もできます。しかし同時に、日本は農業従事者の減少によって、結果的に供給が縮小しているとも言えます。つまり、日本の米作りは「管理された需給調整」と「担い手減少による自然減」が重なって成立している可能性があります。ここに、私が農業を事業として考える上での重要な論点があります。


韓国の米余りから学ぶべきことは、米は作れば売れるという時代ではなくなっているということです。需要が減る市場では、単純に生産量を増やすだけでは危険です。一方で、日本のように担い手が減り続ければ、今度は供給不足や価格高騰が起きる可能性もあります。実際、日本では近年、米価格の高騰や供給不安が問題になりました。2025年には日本が韓国米を輸入する動きも報じられています。つまり、これからの米作りに必要なのは、ただたくさん作ることでも、作らないことでもありません。重要なのは、需要を見ながら作ること。そして、作った米をどの市場に届けるのかまで設計することです。


日本の米作りに活かすなら、結論は大きく三つ


第一に、需要を前提にした生産設計です。
家庭用、外食用、加工用、輸出用では、求められる米が違います。どの需要に向けて作るのかを決めずに生産すると、余剰か不足のどちらかに振れやすくなります。

第二に、主食用米だけに依存しないことです。
人口減少が進む以上、家庭で食べる米の市場だけを前提にすると、長期的には厳しくなります。加工用、米粉、酒米、飼料用、健康訴求、海外向けなど、用途を複数持つことが必要です。

第三に、農業を「生産業」ではなく「需給設計業」として見ることです。
米作りの本質は、田んぼで米を作ることだけではありません。誰に、何の用途で、どの価格帯で、どの販路で届けるのか。ここまで含めて設計して初めて、農業は事業になるのだと思います。


韓国の米余りは、単なる他国の農業問題ではありません。それは、需要が減る時代に供給をどう設計するかという、農業経営そのものの問いです。そして日本は、韓国と同じように需要減少に向かいながら、一方では担い手不足による供給制約も抱えています。だからこそ、日本の米作りに必要なのは、感覚ではなくデータです。情熱だけではなく、需給の設計です。そして、生産だけではなく、価値の出口まで考える経営視点です。


農業未経験の私が外から調べて感じたことは、米作りの未来は「作る力」だけでは決まらないということです。これから問われるのは、どれだけ作れるかではなく、どの需要に向けて、どんな価値として届けるか。ここに、日本の農業経営の可能性があるのだと思います。HIRONORI KAJIKAWA











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