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『中期経営計画』の意義

2020-09-11

中期経営計画


中期経営計画(中計)とは、明確な定義が無いものの「企業の現時点における環境認識と、3~5年先の目指すべき姿を明らかにし、その目指すべき姿の実現に向けた取り組みを体系化して明示したもの」と言え、国内上場企業の約70%は投資家に向けて中計を発表しています。中計の中身は、経営者の方針に基づき、目指すべき姿へ至るための基本戦略をまとめたうえで、スケジュールやシナリオ、部門ごとの施策、数値計画が明記されています。また、中計には、「中長期の企業価値向上」を実現するために会社の中期的な方向性を示す、いわば「海図」の役割が求められています。

「数年先に何が起こるのか?」なんてことは誰にも分かりません。現状から将来を予測し、市場変化を察知することは不可能に近いことです。しかし、「現在」だけに目を向けて経営活動を行っていては、想定外のことが起こった際に適切なリソースが割けなくなります。そのソリューションとして活用されているのが「中期経営計画」です。計画通りに事が運ばないのは当然ですが、その中で、将来的に発生し得るリスクを想定して、予めリソースを分配しておくことで、万一の事態にも備えることが出来ると指摘されています。中計は、単純に3年~5年のスパンで事業計画を立てることだけが目的なのではなく、想定外の事態も含めて考えながら、柔軟な経営活動を続けるための計画であるべきだと考えられています。

これまで私の中では、「中期経営計画は大企業がつくるもの」という認識でしたが、新型コロナウイルスによって世の中が様変わりしたこともあり、その認識は大きく変わりました。認識が変わった理由としては、有事において中計の重要性に気付いたことが大きいですが、中小企業は大企業と比べて社員数が少ない分、計画の全体的な共有が進みやすいという利点に気付いたことも理由として挙げられます。今では、中小企業が策定する中期経営計画もとても大きな意義があると感じています。





中期経営計画は「実行」が伴ってこそ価値がある


中計の策定プロセスでは「SWOT」や「4P」などの経営分析のフレームワークが良く使われます。しかし、フレームワークは中計を考えやすくする枠組みとしては有効ですが、あくまでツールに過ぎません。現状分析を行ったうえで、中計策定の基本的な流れを押さえていれば、どのようなフレームワークを使っても内容に大差はないのではないかと思います。重要なのは、環境認識や戦略・施策、アクションプランが、会社の状況を踏まえた「具体的な内容」で記述されているか、ということではないでしょうか。

中計が「絵に描いた餅」になりやすい背景には、具体的な内容が記述されていないということもありますが、「意思を保持する」ことの難しさもあります。その解決方法として、バランススコアカードを活用して中計の進捗状況を評価する方法や、管理を仕組化する運用方法などをよく目にします。また、「中計をサブ業務ではなく主業務と位置付けることも重要だ」ということも耳にします。しかし、全社でそういう認識を持ち続けたとしても、中計を着実に実行していくことは簡単ではありません。如何にして「実行」するかが課題となるでしょう。





固定型からローリング型へ


このように「実行」の難しい中計は今、「実行の概念」が変わりつつあります。

経営管理サイクルを取巻く最近の状況に目を向けてみると、中長期計画の有効性に対する疑念があり、中計の「賞味期限が短くなっている」という声を多く耳にします。3年間の中計を策定すると、1年目はともかくとして3年目くらいになると策定時から状況が大きく異なっていて、戦略や数値目標が有効性を失ってしまうということがよくあります。それに対して、「事業環境変化が速く、中計の有効性が短期化している中で、経営管理サイクルをどのように運営していくか」ということが課題として挙がっています。

そういった背景から、企業が中計を「固定型」から「ローリング型」へ変えるという動きが多くなっています。もちろん、固定型、ローリング型にはそれぞれメリット、デメリットがあり、ローリング型が優れていると一概には決められるものではありません。ですが、確実に言えるのは、その時々の状況に応じて、2つのタイプの「望ましさ」の程度は変わり得る。そして、少なくとも昨今の状況においては、ローリング型に移行する方が事業環境に合致している、ということではないでしょうか。

中長期ビジョンを実現するための道しるべである中計を「柔軟に運用する」、つまりローリング型を採用することは、事業環境変化が速い昨今の状況への一つの対応策と言えます。環境が変わって有効性を失った目標や戦略に固執することなく、その時々で最適な打ち手を選択し直すことは、最終的に中長期ビジョンへの到達可能性を高めると言えるかもしれません。HIRONORI KAJIKAWA





















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