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新規事業の再投資は何を基準に判断すべきか

2021-09-17
新規事業は、事業を立ち上げてから計画通りにスケールすることもあれば、うまくいかずにシュリンクすることも多分にあります。計画通りにスケールしている、あるいはその見込みが立っている、という場合はそのまま事業を進めていけば良いですが、問題は全く計画通りに事業が進んでいない場合にどうするか。


新規事業とは、新しい収益源をつくるために始められたことであり、既存事業や会社全体の収益的な支えになっていることが存在意義となります。もしも計画通りに進んでいなく、既存事業や会社全体へ悪影響が出ている状態だとしたら、その事業は役割を果たせていないので悪い状態のまま進めるわけにはいきません。計画通りに事業が進んでいない場合はその事業の継続を断念するか、あるいは再投資して事業を立て直すかを判断する必要が出てきます。経営判断として事業の継続を断念する場合、サンクコストを失うことはあっても再投資をして更なる損失を生むリスクは抱えないという判断になります。逆に、再投資をして事業を継続する場合は、更なる損失を生むリスクを抱えるかどうかというとても難しい経営判断となり、断念するよりも判断が難しくなります。それは、再投資をしたとしても事業がスケールすることなく、損失がさらに膨らむ可能性が多分にあるからです。新規事業とは、既存事業や会社全体の収益的な支えになっていることが存在意義であるため、事業の継続か撤退かは、収益的な支えになるかどうかで判断する必要があります。


では、新規事業の再投資は何を基準に判断するべきか。


私は2つの基準を持つようにしています。一つは、NPV(正味現在価値)という評価指標。NPVは投資の採算性を示す指標であり、NPV=(投資によるキャッシュフローの現在価値)-(初期投資額)で算出します。これは、投資によって将来発生するキャッシュフローの現在価値から初期投資額を引いた差額により投資の意思決定を行う方法で、NPVがプラスになれば投資する価値があると判断できます。新規事業への再投資の定量的な判断基準として活用しています。


そしてもう一つの基準は、責任者の「情熱」です。新規事業を進めていく責任者の情熱がどれだけあるか。新規事業を始めるにあたっては事業計画を作成して会議を開きますが、まず作成した事業計画に責任者のどんな想いが詰め込まれているかを確認します。そして、会議でネガティブな質問をぶつけられても自信を持って回答するかを確認します。責任者が作成する事業計画に強い思いが込められているかどうか。会議でネガティブな質問をしても自信を持って回答しているかどうか。事業責任者の「情熱」があるかどうかを再投資の判断基準として持つようにしています。


今、CFYでは新規事業へ再投資をした案件が2つあります。コロナ禍での経営判断ということで難しくもありましたが、2つの基準を満たしていることが確認できたので、あまり迷うことなく再投資の判断をしました。定量的な基準のNPVがプラスであることも前提としてありますが、責任者の「情熱」が強く感じられたことも大きく作用しています。情熱をもって取り組む姿を見ると心強く感じられます。あとは経営者である私が事業の成功のために後押しをしていくだけです。


新規事業とは、新しい収益源をつくるために始められたことであり、既存事業や会社全体の収益的な支えになっていることが存在意義となります。「新規事業の再投資」という難しい経営判断をする場合、NPVと情熱という2つの基準を持つことで難しい経営判断の精度が高められるのではないか。そう考えて実践的経営に励みたいと思います。HIRONORI KAJIKAWA